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第44回東京書作展(全国公募)審査会  会員リポート

更新日:3 日前



主催 東京新聞   

後援 文化庁 東京都


2022年10月20日、掲題の書作展の最終審査が東京都足立区北千住のシアターセンジュにて行われました。

第1次、第2次審査を通過した作品50点が、この日午前中の第3次審査を受け、その中の10点が午後の最終選考となる第4次審査に臨みました。

最終審査は公開審査です。審査員がそれぞれの作品を観客とカメラの前で口頭で評価します。率直な意見で討論し、大賞を含む上位3賞の最終決定を挙手で選出するという、この分野の審査会では他に例を見ない公明正大な書作展です。




東京書作展の主旨

文化は歴史の土台に築かれ、伝統を正しく受けつぎ、発展させて行くところに豊かな未来があります。

高い精神性を持ち、東洋文化の粋である書道が現代ではともすれば生きた国語生活から遊離し、いたずらに造形の為の造形に溺れる風潮なしとしません。しかし、時代は古典の背景のもとに練磨された本格的な書を求めようとしています。

真に実力があり、研鑽を怠らない全国の篤学の人のために、公募展「東京書作展」を開催いたします。

(東京書作展事務局からの開催案内より)




出品部門

第一部門:漢字、篆刻、刻字

第二部門:仮名

第三部門:現代漢字仮名交じり文

第四部門:小字数


それぞれ部門特別賞が選定されますが (本サイトでは掲載せず本展リポートの際に掲載予定)、最終審査では部門の隔たりはなく全ての作品が同じ基準で審査されます。


審査は一般の部と依嘱の部に分かれ、一般の部は常任運営委員の役員と審査委員により選出され、依嘱は常任運営委員より選出されます。




第3次審査発表

会場内では第3次審査に進出した50点の作品が順次披露され、同時に評価がアナウンスされます。この場で点数が発表されると第3次審査止まりとなり、第4次(最終)審査に進出と発表されると上位10作品に残り、その後の討論の場である最終選考の場に進むことができます。




最終審査(公開討論


お昼の休憩をはさみ、審査会場では最終審査待ちの10点が貼られました。この後の審査員の先生方も触れておりましたが、なんとバラエティーに富んだ作品でありましょう。私は高校野球で夏の甲子園大会に出場する各学校の生徒が行進するときの様を連想しました。ここに至るまでどれだけのものを犠牲にして、どれだけ悩み、一体何枚書いて、神経すり減らしながら昼も夜も制作に取り組んできたことでしょう。経験上痛いほどよくわかります。皆さん「立派です!」。大変感銘を受けました。心より拍手しお礼を申します。








最終審査開演

主催 東京新聞社 文化事業部長 上野氏のご挨拶


ご本人談を要約します。

数日前に二つの展覧会を拝見して来られたのことです。一つは東博で開催されている国宝展、もう一つは出光美術館の仙涯展です(仙涯のすべて / 2022年10月16日閉展)。前者は全89展のなか書作品が20数点あり、どれも素晴らしく非常に感銘を受けられたとのことです。一方で、後者の仙涯はヘタウマ(もちろん尊敬と敬愛を込めた表現です)とも評されている江戸時代に活躍した禅僧で、絵のみならず書も展示されており、作品はどれも大変味わい深く、非常に興味を持たれたとのことです。ある面両極とも言えるこの二つの展覧会を感慨深く拝見されたことを冒頭に申されました。

最終選考のこの会場に来るまでに、どんな作品に出会えるのか、また作家がどんな気持ちで書いたのかも含めて、この場で作品とどんな対話ができるのかを楽しみにして参られたそうです。

最後に、3日間に渡り長時間審査に当たられた審査員の先生方、出品者の方々とご指導に当たられた先生方、また本作品展に関わる全ての関係者にお礼を申されておりました。




審査委員長 内山玉延先生のご挨拶


総体的に見ると、ご覧の通りバラエティに富んだ作品が最終審査にも残ってきました。

このことについて大変嬉しく思っています。今日まで、ご出品していただいた多くの皆様方、お越しいただいた皆様、準備・計画にご尽力いただいた東京新聞、並びに、事務局の皆様に大変感謝しております。

*この後の討論会では、いずれの審査員も作品がバラエティに富んでいることを強調されていました。



司会者の事務局の崎村氏による選考会の正式アナウンスに心が躍ります。

「それでは、第44回東京書作展、内閣総理大臣賞、東京書作展大賞作品の決定をお願いします。この作品が大賞に相応しい、あるいは、この作品を最高賞の対象に推したい。そう思われる作品にご意見を頂きながら進めて参ります。それでは先生方、大賞決定の討論です。挙手にてご意見をお願いいたします。」


討論会の全体的な意見を要約し下記に記載します。

 
作品全体印象・選定基準について
・全般的に124番を推す声がかなり多かった
・並んだ10点のように変化に富んだ良い作品の展覧会は全国を見ても他にはない
 絹本が2点(6番、10番)、淡墨作品が2点(8番、9番)、かな1点(5番)
 刻字1点(1番)
・日本で一番素晴らしい作品展である
・評価基準として、字が安定しているか、構成が面白いか、流れ、潤渇、間があるか
 を見る
・小字数作品が最終選考に残ってほしかった。
 刻字も小字数だが、墨の作品も出てきてほしい
・上位10点、どれも上位3賞に相応しい
・最終選考が公開討論で、最高賞の選定も挙手による決定というのは実に素晴らしい
・2番の赤い紙の作品においてコントラストの良さに触れる審査員が多かった
・刻字における評価時間が他の作品より多い。(作品評価の項を参照してください)

※上位3賞のコメントは、下記受賞作品画像の項目の下段に表記します。





2022年 最終審査進出作品 10作品







大賞選考の際の挙手で候補に上がった作品は、1番、3番、4番でした。大賞、準大賞、第三位各賞の上位3賞は結果この3点に決定されるのですが、選定には十分な時間をかけて討論が展開されました。

下記に受賞者名と作品、さらに選考中の審査員の意見を簡素化して掲載します。私個人の意見も掲載しようと思いましたが、11/10に東京新聞紙上に於いて本書作展の全成績発表と同時に上位受賞者と作品の写真掲載、並びに審査員の書評も掲載されるので現時点では控えます。




大賞 内閣総理大臣賞 

東京都 武井茜翠氏


【 選考会評価 】

このような漢字仮名交じりの作品はどこの展覧会にも見られない 表現する術を心得ていて技術的要素をしっかりつかりつかんでいる

淡々としているように見えて、すごく対比を効かしている

大袈裟なパフォーマンスをしていないが、作品として魅せる空間バランスが良い

飄々としていて、かつしっかり描かれている

非常に読みやすく、達治詩「大阿蘇」の情景のスケールを醸し出している

雨の文字が9個書いてあり、それらは全部表情が違う

かなが素晴らしい

行の流れ、余白が素晴らしい

今年この作品に会えてすごく良かった

楽しく見られる

かなり古い紙に書き、ボロボロ破れる危険性があり、かつ滲みを出しにくいものであった

似たフレーズを繰り返し書いて神経がよく行き届いている

一見おとなしい作品であるが静のなかに動が窺える

誰が見ても良い作品である

軽妙とか洒脱というよりも日本人の侘び寂びの感性に響くようである

自然の流れがある

線の質感において、余分なものを削ぎ落とした美しさがある

紙の柄の模様が目立たず渋い感じで品位がある

終始一貫性がある




準大賞 文部科学大臣賞

東京都 田川繡羽氏

【 選考会評価 】

長い縦画の線が全て違う表情を持ち、技術的側面をしっかり意識して書いている様子が窺える

書の偶然性の美しさの表出がある

滲みも掠れも活かしていて最後まで破綻がない

落款の収め方が心にくい

パッションを感じる

瞬間的な力のある線が魅力

動きのある表現の中に静の部分も感じられる

線質が良い




東京都知事賞

熊本県 小林茂樹氏

【 選考会評価 】

非常に充実感がある

技術的に相当高いものを持っている

渇筆の表現を掘ることで表現している

一年ほどを費やし制作された

何十年来の中で、書作展における新鮮さというものにおいて特に際立っている

福岡県大川市から丸太を取り寄せ、裁断加工から始め制作期間は10ヶ月となる

表面には虹彩箔を施している





東京新聞賞

最終選考に進出した、上位3賞以外の作家です

2番  高田月魁氏 オーストラリア在住

5番  中村月咲氏 東京都在住

6番  根津煌露氏 埼玉県在住

7番  福田梢藍氏 神奈川県在住

8番  藤田馬遊氏 埼玉県在住

9番  前田深翠氏 神奈川県在住

10番 水村瑞鳥氏 千葉県在住




最終審査には残れなかったものの個人的に着目した8点

以下の6点は第3次審査に留まりました。最終審査には惜しくも進めませんでしたが、個人的に好きな作品で、素晴らしい作品ですので紹介します。編集の都合上、サイズが整っておりませんが全て同じサイズの作品です。ご了承ください。







会場にて

数名の審査員の先生とお話しできましたので紹介します。

左 審査委員長の内山玉延先生

右 常任運営委員の原田歴鄭先生              上 審査員の江島曜一先生

               

 毎年貴重なご意見をお聞きします      

前出の選考会評価にたっぷり掲載      

     



右 原田歴鄭先生

社中の1番の作品を前に・・・


毎年、討論会では大変勉強になる多くのご意見をいただいておリます。単なる批評ではなく、作品の見方、偉大な先人たちの取り組み、材料のこと、書の表現方法とあり方などを交えて、多方面からの見識を元に審査を述べられております。

















常任運営委員の中村山雨先生(写真下左)ともお話ができました。第1回から東京書作展に関わられ、数十年に渡り審査を務めておられます。また、東京書作展発足時には作品を出展したこともあり、新聞紙上で、仙涯的な作風と評された思い出もこの場で述べられていました(前出の上野氏により仙涯が話題に上ったため)

審査終了後、大賞作品をじっと眺めておられた山雨先生に話しかけたところ、一時お話を聞くことができました。筆者は、昨年は「王鐸と米芾を勉強するように」と言われ、今年は「喪乱帖を勉強するように」と・・・ただただ「はい」と言うばかりですが、話が作品の下部のまとめ方に及びました。


「先生、私も同様ですが、多くが上部はおおらかに書いて、下部はつまり気味になる傾向がありますよね」

「そうだね。だから、違う行の隣り合わせは、連綿にしたらその隣は離すとかね・・・」

表現方法におけるたくさんのことを話していただきました。


ちなみに、最終選考に進出した前田深翠氏と水村瑞鳥氏がその場に居合わせ、先生にご意見をいただいておりました。直接の生徒ではありませんが、このような交流は滅多に見られないので、いいなあと思いました。






最後まで読んでいただきありがというございます。

皆さま、是非、本展にお越しください。端正で流麗、かつ含蓄のある作品を数多くご覧いただくことができます。日本をはじめ広く東洋文化に触れて、素晴らしいひと時をお過ごしください。



44回東京書作展  会期 : 20221118日(金)〜1124日(木)
                  1121日(月)は休館日です
                       開場は午前9時30分〜午後530分(入場は5時迄)
                       最終日は230分まで(入場は2時迄)

                場所 : 東京都美術館2階 第13展示室
                       都美は上野動物園の隣
                       便利になった上野駅公園口から大人の足で歩いて5




2022年10月28日

菊地雪溪